中国の半導体産業を語るとき、上海(SMIC・華虹)や北京(中芯北方)がよく注目されますが、実は深圳もファブレス半導体の重要拠点です。製造工場よりも「設計」を中心とした企業が集まり、HiSilicon(華為傘下)やBYD半導体、Goodixなど世界に名が知られた企業が拠点を構えています。私自身、深圳の某大規模工場(建設中の部分もありました)を訪問する機会があり、深圳の半導体産業の勢いを肌で感じました。この記事では、深圳の主要半導体企業を出張族目線でマップ化して解説します。
深圳の半導体産業の特徴
「ファブレス(設計専門)」が主流
上海・北京がファウンドリ(製造)の中心であるのに対し、深圳はファブレス(設計のみで製造は外部委託)企業が集中するのが特徴です。スマホ、IoT、自動車、AI向けなど、用途別に多様な企業が立地しています。
香港・東莞との産業クラスター
深圳は香港・東莞と隣接する「大湾区(グレートベイエリア)」の中核都市。香港の国際金融、深圳のテック設計、東莞の製造を組み合わせたサプライチェーンが世界トップクラスの効率を誇ります。
深圳の主要半導体企業マップ
深圳の半導体企業は「ファブレス(設計のみ)」と「製造拠点を持つ企業」に大別できます。順に紹介します。
【ファブレス】① HiSilicon(華為海思)

本拠地:南山区(華為本社内)
華為技術(ファーウェイ)の半導体子会社。Kirinシリーズ(スマホ向けSoC)、Ascend(AIプロセッサ)、Kunpeng(サーバー向けARMチップ)など、中国半導体産業の旗艦企業。米国の輸出規制対象となり、近年は独自半導体技術の開発を加速しています。
【製造拠点あり】② BYD半導体(比亞迪半導体)
本拠地:坪山区(BYD本社・工場群)
EV最大手BYDの半導体子会社。パワー半導体(IGBT・SiC)、車載MCU、CMOSイメージセンサー等を製造。EV需要拡大とともに急成長しており、坪山区では工場の建設・拡張が続いています。
【ファブレス】③ Goodix Technology(汇顶科技)
本拠地:南山区
指紋認証センサーで世界トップシェアを誇る企業。スマホの指紋センサーやタッチコントローラーを設計するファブレス。Android系スマホメーカー(Xiaomi、OPPO、vivo等)に広く採用されており、深圳ファブレス代表格。
【ファブレス】④ ZTE Microelectronics(中興微電子)
本拠地:南山区(ZTE本社内)
通信機器大手ZTEの半導体部門。通信用チップ、5Gベースバンド、サーバー向けプロセッサ等を開発。米国制裁の経験を経て、独自半導体技術の確立に注力しています。
【製造拠点あり】⑤ SMIC深圳工場
本拠地:宝安区
上海本社のSMICが運営する深圳工場。成熟プロセス(28nm以上)のファウンドリとして稼働。深圳唯一の大規模半導体製造拠点であり、ファブレス企業にとって地理的に近いパートナーです。
エリア別:深圳半導体クラスターマップ
南山区:「中国のシリコンバレー」

深圳の半導体・テック企業が最も集中するエリア。華為、ZTE、Goodix、テンセント等の本社が集まり、「中国のシリコンバレー」と呼ばれます。出張で訪問するならホテルは南山区周辺が便利。深圳湾沿いの近代的なオフィスビル群が圧巻です。日本人出張者がこれまでよく訪れていた地域ですね。
福田区:金融・行政の中心

福田は政府機関や金融機関が集中し、半導体企業の本社や開発拠点も多いエリア。華強北エリア(電子部品の聖地)も福田区にあり、コアな電子部品サプライヤーが集積しています。
宝安区:製造業の集積地
深圳宝安国際空港もあり、SMIC深圳工場、Foxconn関連など製造拠点が立地。出張族にとっては空港アクセスが良く、製造現場訪問に便利。
坪山区:EV・自動車半導体の中心
深圳東部の新興エリアで、BYD本社・工場群がある。EVと連動する自動車半導体(パワー半導体・車載MCU)の集積地として急成長中。市中心部から車で40〜60分の郊外に位置します。数年前まで何にもない田舎だった土地を先端工業地帯にすべく開発真っ最中。従って建物は新しく、建設途中の建物も数多く見られます。(その一方で、建設中止となり長い間放置されているんだろうなと思しき建物も多々見受けられ、景気はなんとも)
深圳半導体出張のポイント
南山区・福田区への滞在がおすすめ
深圳の半導体企業の多くは南山区・福田区に集中しているため、これらのエリアか市中心部のホテルに滞在するのが効率的。地下鉄でほぼ全エリアにアクセスでき、夜の食事・観光の選択肢も豊富です。
坪山区訪問は車・タクシー必須
坪山区は市中心部から離れており、地下鉄14号線でアクセスはできるものの、駅から工場まではタクシー(DiDi)が必要。市中心部から1時間程度を見込んでスケジュールを組みましょう。私訪問時の注意点
- NDA・訪問パスは事前準備:HiSilicon等は特に厳格
- パスポート常時携帯:訪問受付で必須
- VPN準備:中国本土ではGoogle・LINE等使用不可
- WeChat Pay/Alipay設定:日本でアカウント作成と海外クレカ紐付け
- 名刺の中国語表記版:英語版でもOKだが好印象
⚠️ 注意:HiSiliconなど米国規制対象企業を訪問する場合、所属会社のコンプライアンスチェック(輸出規制対応)が必要なケースがあります。事前に法務部門への相談を。
深圳半導体クラスターの強み
サプライチェーンの近接性
深圳ファブレス企業のチップ設計→東莞での部品製造→深圳での組み立てがすべて1〜2時間圏内で完結。世界トップクラスのサプライチェーン効率を誇ります。日本人エンジニアも多数見受けられました。
技術人材の集積
中国の理工系大学卒業生が深圳に集まり、優秀なエンジニアの母集団は世界トップクラス。半導体・AI・IoT等の分野で急速に技術力が伸びています。
米中対立による独自路線の加速
米国の輸出規制を受け、独自設計・国産化の動きが活発化。HiSiliconやBYD半導体が独自プロセスや独自IPの開発を進めており、中国国内向け半導体市場が急成長しています。
上海・北京・深圳の半導体産業比較
| 都市 | 主な特徴 | 代表企業 |
|---|---|---|
| 上海 | ファウンドリ(製造)中心 | SMIC・華虹・紫光展鋭 |
| 北京 | 研究・国家プロジェクト | 中芯北方・紫光本社 |
| 深圳 | ファブレス(設計)中心 | HiSilicon・BYD半導体・Goodix |
まとめ:深圳は「中国半導体の設計脳」
深圳の半導体産業は、製造より「設計の集積地」として独自のポジションを築いています。HiSilicon、BYD半導体、Goodix、ZTE等、世界に名が知られた企業が拠点を構え、米中対立下でも独自進化を続ける勢いを感じます。
この記事のポイント:
- 深圳はファブレス(設計)中心の半導体クラスター
- HiSilicon、BYD半導体、Goodix等が主要企業
- エリア別では南山区が中心、坪山区がBYDのEV半導体拠点
- 出張のホテルは南山区・福田区がおすすめ
- 坪山区訪問は車・タクシーで1時間程度の郊外
- 米中対立で独自路線が加速中
半導体業界の出張族として、深圳の半導体地図を把握しておくと、次の出張がスムーズに進みます。中国の技術発展のスピードを肌で感じられる、刺激的な出張地です。
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