海外出張のとき、クレジットカードを何枚持っていくか決めていますか。
私は半導体関連の仕事で、台湾やアメリカに出張してきました。その中で一度も困らなかった、とは言えません。カードが使えない国、カードを店員に手渡す場面、財布ごと管理しなければならない移動。
この記事では、出張者がカードをどう持つべきかという話と、その中で「券面に番号が印刷されていないカード」が持つ意味を整理します。
出張者のカード選びは、旅行者向けの比較記事とは軸がズレている
「海外 クレジットカード おすすめ」で出てくる記事は、たいてい海外旅行傷害保険と外貨決済の手数料を主軸に順位をつけています。旅行者にはそれで正しいと思います。
ただ、出張者が同じ軸で選ぶと少しずれます。保険は会社が団体で用意していることが多く、業務で使った分は実費精算で会社に戻ってくることが多いからです。この2つには例外があるので後半で詳しく書きますが、少なくとも「順位づけの最上位に置く項目ではない」というのが私の実感です。
私が出張を重ねる中で、実際に効いてくると感じている軸は次の6つです。
- その国で物理的に使えるか(現地の主流の決済手段に合っているか)
- 止まったときに詰まないか(予備の決済手段があるか)
- 券面から情報を読まれないか
- 急に決まった出張に、発行が間に合うか
- 立替払いで貯まるポイントが、自分に残るか
- タッチ決済可能か
この順番で見ていきます。
まず前提:出張先によって「カードの使えなさ」がまったく違う
「海外でカードが使える」という一言は、国ごとにほとんど別の話だと思ったほうがいいです。
中国本土(青島・深圳・天津):カードを出す場面がそもそも少なかった
これは私が訪問した時点の話です。ホテルの精算のようにクレジットカードが通る場面はありましたが、街なかの飲食店や売店、タクシー、バスといった日常の支払いは、ほぼモバイル決済が前提でした。財布からカードを出す動作自体が場違いに見えるくらい、支払いがスマホに寄っていた印象です。
屋台や小さな店だと、そもそもカードの読み取り端末が置かれていません。スマホの画面のQRコードを見せるか、相手のQRコードを読むか。その2択で街が回っていました。
ここで重要なのは「カードが弱い国だ」ということではなく、カードだけを持っていくと詰む場面があるということです。中国出張の決済まわりの準備は別記事にまとめています。
なお、中国の決済事情は変化が速い分野です。ここに書いたのはあくまで私が行った時点の状況で、いま同じとは限りません。
台湾・アメリカ:日本と同じ感覚で通った
2024年10月の台湾、2025年1月のアリゾナでは、逆にタッチ決済が普通に使えました。コンビニでもレストランでも端末にかざすだけで、日本での使い方をそのまま持ち込めた感覚です。レンタカーやホテルのように、そもそもカードがないと話が始まらない場面もありました。
同じ「海外出張」でも、行き先が変わればカードの立ち位置がここまで変わります。だから「海外に強い1枚」を探すより、行き先ごとに主力の決済手段が入れ替わる前提で、手札を複数持っておくほうが実務的だと考えています。
出張中に、カードが人の手に渡る場面は思っているより多い
もうひとつ、出張してから意識するようになったことがあります。カードが自分の目の届かないところにある時間が、意外と長いということです。
- レストランで、伝票と一緒にカードを奥へ持っていかれる
- ホテルのチェックインで、デポジット用にカードを預ける
- 会食の支払いで、その場の流れでカードを人に渡す
日本でも起こることですが、言葉が通じにくい場所で、席から見えない位置に数分置かれると、落ち着かない気持ちになります。何をされているか確認する手段がないからです。
ここで気にしているのは、いわゆるスキミングだけではありません。券面に印刷された情報は、数秒あれば読み取れてしまうということです。撮影されればそれで終わりですし、番号と有効期限と裏面の数字が揃えば、ネット決済に使えてしまう場面があります。
もちろん、カードには不正利用の補償があります。ただ出張中に問題が起きると、補償の前に「カードが止まる」という現実が先に来ます。カード会社が不正の疑いで利用を止めれば、そのカードは翌日の会計で使えません。補償されるかどうかは帰国後の話で、いま目の前の支払いは解決しないのです。
だから私は、カードを2枚に分けています
1枚が止まった時点、あるいは現地で通らなかった時点で、出張が詰みます。ホテルのデポジットが切れない、帰りの交通費が払えない、という状況は、海外だと相当こたえます。
そこで、私は次のように分けるのが現実的だと考えています。
- 国際ブランドを分ける:同じブランドで2枚持っても、そのブランドが通らない店では2枚とも役に立ちません。系統の違うものを組み合わせておくと、対応店舗の差を埋められます
- 発行会社を分ける:同じ会社の2枚だと、システム障害や不正検知で同時に止まる可能性があります
- 保管場所を分ける:2枚とも同じ財布に入れていたら、財布を落とした瞬間に意味がなくなります。1枚は財布、1枚はホテルの部屋やスーツケースに
- サブは年会費がかからないものにする:使用頻度の低いサブカードに年会費を払い続けるのは難しく、いずれ解約してしまいます。持ち続けられることがサブカードの条件です
- 券面から情報が読めないものにする:人に渡す前提で考えると、これが効いてきます
この条件を並べていくと、候補として挙がってくるのがナンバーレスのカードです。
サブの候補としての三井住友カード(NL)
私自身はこのカードそのものを持っておらず(同じ発行会社の、別のナンバーレスのカードを使っています)、使用感を語れる立場にはありません。なので、ここは公式に書かれている条件だけを淡々と並べます。
| 年会費 | 永年無料 |
|---|---|
| 申込条件 | 18歳以上(高校生を除く) |
| 発行スピード | 最短10秒 ※即時発行できない場合があります。 |
| 海外旅行傷害保険 | 最高2,000万円まで利用付帯にて補償 |
公式が挙げているメリットは、次のとおりです。
- 年会費永年無料
- ナンバーレスで安心のセキュリティ
- 最短10秒で即時発行できる
※即時発行できない場合があります。 - 貯まったVポイントの使い道が豊富
※このほかにポイント還元に関するメリットもありますが、出張の話から離れるのでここでは触れません。気になる方は公式ページで確認してください。
一方、デメリットとして挙げられているのは次の3点です。
- 基本のポイント還元率は高くない
- カード番号の確認に本人認証が必要
- 国内旅行傷害保険やショッピング保険の付帯がない
出張者の目線で見ると、どこが効くか
①年会費が永年無料であること。サブカードは「持ち続けられること」が最優先です。出張が半年空いても、財布に入れっぱなしでも、コストがゼロなら解約する理由がありません。ここは条件を満たしています。
②ナンバーレスであること。カードを人に渡す前提の運用と、素直に噛み合います。ただしこれは券面を見られる経路をふさぐ話であって、決済端末側のリスクまで消えるわけではありません。「ナンバーレスだから安全」と言い切れるものではない、というのは正直に書いておきます。
③発行が速いこと。半導体まわりの出張は、決まってから出発まで日数がないことがあります。翌週に飛ぶことになってから「カードをもう1枚」と思っても、通常の発行では間に合わないことがある。最短10秒という選択肢があるのは、この業界の出張だと現実的に効きます。ただし審査があるので、即時発行できない場合があります。出発の前日に申し込むような使い方は避けたほうが無難です。
比較記事でよく見る「保険」と「手数料」は、出張だと順位が下がる
ここは正直に書きます。旅行者向けの比較記事が重視する2項目は、出張だと事情が変わります。
海外旅行傷害保険について。三井住友カード(NL)の海外旅行傷害保険は、最高2,000万円まで利用付帯にて補償されます。「利用付帯」というのは、旅費などをそのカードで支払っていることが条件になる、という意味です。会社が航空券を手配する出張では、この条件を満たせないことがあります。
ただ、そもそも出張では会社が海外旅行保険を手配していることが多く、カードの付帯保険を主戦力として当てにする場面ではありません。「保険が付いているから安心」という理由でカードを選ぶのは、出張者にとってはあまり意味のない判断だというのが私の考えです。まず会社の保険の内容を確認するほうが先です。
外貨決済の手数料について。海外でカードを使うと、どのカードでも所定の事務処理手数料がかかります。旅行なら自腹なので気になる項目ですが、出張の業務支出は実費精算で会社に戻るのが一般的で、自分の財布は痛みません。
つまり出張者は、旅行者向け記事の順位づけをそのまま持ち込まないほうがいい、というのが結論です。
ただし、例外が3つあります
「関係ない」と言い切ってしまうと嘘になるので、ここは丁寧に書きます。
例外1:精算の換算基準を、会社の規程で確認しておく。カード明細の円貨請求額でそのまま精算される会社なら、手数料込みで全額戻ります。一方、社内規程で「支払日のTTSレート」や社内の固定レートに換算して精算する会社だと、その差額は自分で被ることになります。ここは会社によって本当にバラバラなので、経費規程を一度読んでおく価値があります。1回の出張では数百円でも、年に何度も行くなら効いてきます。
例外2:私費部分には普通に手数料がかかる。自分の食事、土産、延泊分など、経費に落とさない支出は当然自腹です。出張中の私費は、後から明細を見ると思ったより積み上がっています。
例外3:出張の前後に私的な旅行をくっつける場合。会社が手配した保険は、業務期間だけを対象にしていることがあります。前後に休暇をつけるなら、その区間が保険の対象外になっていないか確認したほうがいいです。ここは「会社が保険に入っているから大丈夫」が一番危ない場面です。
ナンバーレスの弱点も書いておきます
公式もデメリットとして挙げていますが、カード番号の確認に本人認証が必要です。券面に番号が印刷されていないということは、他人から読めない代わりに、自分もすぐには読めないということでもあります。
これが海外で効いてきます。オンラインで航空券を取り直す、現地のサービスにカード番号を入力する、といった場面で、スマホと通信環境がないと番号にたどり着けない状態になります。スマホの充電が切れている、電波がない、アプリにログインできない。海外だとどれも普通に起こります。
なので、ナンバーレスのカードを持つなら、通信手段の確保がセットになります。現地SIMやeSIMを日本で用意しておく、モバイルバッテリーを持つ、といった準備です。私は「ナンバーレスは通信とセットで初めて機能する」くらいに考えています。
そしてもう一段、注意が必要な点があります。空港やホテルの公共Wi-Fiでカード情報を扱うこと自体にリスクがあるということです。誰でも接続できるネットワークで、カード番号を表示させたり入力したりするのは、できれば避けたい行為です。通信の保護と、中国のようにアプリ自体が使えない可能性がある国での準備については、こちらにまとめています。
【中国出張】これだけは日本でやっておく。現地でスマホが文鎮化しないための『必須設定3選』と『便利アプリ6選』
見落とされがちな話:立替払いのポイントは、誰のものか
これは出張者だけが持つ論点だと思っています。
出張の経費を自分のカードで立て替えると、支出は会社に戻ってくるのに、ポイントは自分に残ります。航空券、ホテル、現地の食事まで含めると、年間の利用額は普通の生活費とは桁が変わってきます。
だから出張者は、一般の人よりも「年会費のかからないカードを1枚余分に持っておく理由」が強いと考えています。使わない月があっても損をせず、出張が入った月だけ大きく働いてくれるからです。
ただし、ここは会社の規程を必ず確認してください。経費を個人のカードで立て替えること自体を禁止している会社や、立替で得たポイントの個人帰属を規程で制限している会社があります。就業規則や経費規程を確認したうえで判断する話であって、私から「やったほうが得です」とお勧めできる性質のものではありません。
申し込む前に確認しておきたいこと
最後に、実務的な注意をいくつか。
カードは申し込めば必ず作れるものではなく、審査があります。前述のとおり即時発行できない場合がありますので、出張の日程が決まっているなら余裕を持って手続きしてください。
また、申込条件や補償の内容、ポイントの付与条件は変更されることがあります。ポイントの付与には条件と上限があるので、最新の内容は必ず公式ページで確認してください。私がここで細かく断定して書くと、かえって迷惑をかけることになります。
まとめ:出張前のカード・チェックリスト
最後に、私が出張前に確認していることを並べておきます。
- カードは2枚以上持つ(1枚が止まっても動けるように)
- 国際ブランドと発行会社を分ける
- 保管場所を分ける(財布とスーツケース、身につけるものとホテル)
- 行き先の決済事情を調べる(カードが主力ではない国がある)
- 保険の付帯条件を確認する(まず会社の保険の対象期間から)
- 精算の換算基準を経費規程で確認する
- 通信手段を確保する(ナンバーレスなら、これは必須条件になる)
「海外に強い1枚」を探すより、止まったときに動ける状態をつくっておくことのほうが、出張では効きます。年会費が永年無料で、券面から情報が読めなくて、急に決まった出張にも間に合う。サブカードに求める条件としては、素直に噛み合っていると思います。
持っていないカードなので使用感は語れませんが、条件を並べて判断する材料としては、以上がすべてです。
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※本記事の情報は2026年8月1日時点のものです。年会費・申込条件・補償内容・ポイントの付与条件は予告なく変更されることがあります。最新の内容は必ず公式サイトでご確認ください。
※ポイントの付与には条件と上限があります。
※本記事は決済手段の選び方について書いたもので、特定の金融商品の購入を勧めるものではありません。


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